高山市市制施行70周年記念誌 たまゆら|目次

きみが微笑むとき

 日和田小学校は岐阜県で学童が一番少なく、一年生から六年生まで合わせてたった十名しかいない。たった十名しかいないということが、子どもたちにとってどうなのかは大人にはわからないが、木の香りがする明るい校舎や遊具を我がもの顔で使ったり、全員が兄妹のような関係の学校生活は想像するととても楽しい。 
「晴れていれば御岳山が目の前に見えますよ」
 校長が指差す方角を見たが、あいにくの靄(もや)で何も見えなかった。すぐそばのカラマツ林の向うからカッコウの鳴き声が聞こえた。
 ここでは大きな木のテーブルを囲み、校長をはじめ各先生たち九名と全生徒十名が揃って昼食をとる。
 縦割り教育について話を伺うと
「大きい子が小さな子の面倒をみるのは、ここでは当たり前ですよ。それと役割り分担が決まっているから手順が早いし、よく動くよ。自分が何をすればいいのか、この子たちはわかっているから」
その言葉を聞いて、必然性から生れる暮らしぶりがいかに力強いものか、納得した。
 雨上がりの校庭に出ると、沢山のつばめが低空で飛翔していた。振り返ると校舎の壁にはつばめの巣がたくさんかかっていた。生徒数が少なくてもここには広くて大きくて深い世界がある。

高根町日和田/千町牧場 Sencho Ranch, Takane-machi Hiwada写真右○高根町日和田/日和田小学校
(right) Hiwada Elementary School, Takane-machi Hiwada
写真左○高根町日和田/千町牧場
(left) Sencho Ranch, Takane-machi Hiwada


 

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高根町日和田/日和田小学校 Hiwada Elementary School, Takane-machi Hiwada

高根町日和田/日和田小学校 Hiwada Elementary School, Takane-machi Hiwada

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