高山市市制施行70周年記念誌 たまゆら|目次

樹から生れる

 日本人は今でも大黒柱を敬う。そして板の間を裸足で歩き、木の香りのする湯舟に浸かる暮らしを理想とする。幼い頃は眠れなくなると天井の節を数えながら、まぶたが重くなるのを待った記憶も持っている。自然に負けまいと対峙(たいじ)する西欧人と比べると、自然に溶け込み、共に生きることを善しとするのが日本人の考えだ。だから木肌の温もりに触れ、自然が描く木目を眺めることで、生物の生命力と落ち着きを取り戻せると、日本人は信じることができるのだ。そしてここにも自然に魅せられ、木に魅せられ、一脚の椅子あるいは一棹の箪笥(たんす)に、心と技を尽くす家具職人がいる。
 家具づくりの工程を最初から最後までをひとりでこなす彼は、人の手を借りないことで、責任のありかを明確にする。使う側にしても気にいれば誰をほめ、よくなければ誰に文句をいえばいいか、極めて明快だ。だから、お互いに妥協ができないから、おのずと感性や技術に厳しくなる。
 彼らの生み出した木の家具は、表情といい、仕草といい、面白いほど作者に似てくるというが、木の命を知り、それを再び材として、その木が生きてきただけの命を再生できる家具職人は、俗人からみればまさに雲の上の仙人のようである。

清見町坂下/飛騨牛 Raising Hida Beef Cattle, Kiyomi-cho Sakashita写真右○清見町藤瀬/家具を作る人
(right) Furniture Craftsman, Kiyomi-cho Fujise
写真左○清見町坂下/飛騨牛
(left) Raising Hida Beef Cattle, Kiyomi-cho Sakashita

 

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清見町藤瀬/家具を作る人 Furniture Craftsman, Kiyomi-cho Fujise

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