ゆたかさのあるまち。

ゆたかさのあるまち。

住み続けるほどに愛着が増していく。ひとりにひとつ、地域の自慢がある。それこそが豊かさ。

 周りを山で囲まれている高山には、名水と呼ばれる清水が脈々と湧き出る。
 国府町広瀬町字作料(さくりょう)。当時の地名から命名された『作料清水』はその名前からして田地に恵みを与える生命の水といった感が強いが、当時は五反分の田圃に水を供給しながら、地域の住民の簡易水道として大切にされていた。
 やがて作料地区にも上水道が完備されはじめると『作料清水』は暮らしから次第に遠ざかり、やがて寂れてしまった。こうして一旦は消えてしまった「水と人との関係」に再び熱い視線を注いだのは広瀬町に住む実年会の連中だった。二十年前、彼らは重機を駆り出し、額に汗を流し、体をしならせながら水汲み場を整備し、『作料清水』を蘇らせた。
 岩から落ちる清水は真夏の空気を一瞬にして冷気に変え、大型のペットボトルを二十秒ほどで満たす。真夏でも枯れることなく、雨が降ってもけっして濁ることがないというが、土壌の表層部分を伝って流れる清水と違い、固い岩盤の中を深く染み入って湧き出る『作料清水』は口腔内を冷ややかに、そしてまろやな露のような感じで満たしてくれる。
「うちの嫁はここの水でご飯を炊いとる」
そんな話に耳を傾けながら東屋(あずまや)で佇んでいるとペットボトルを下げた見知らぬ老人が水を汲み始めた。考えてみれば自然はいつも誰にでも無償で恵みを提供してくれるのだ。

 ゆたかさのあるまちづくりは、地域を愛し、家族を愛することから始まると高山市は考えます。そのために、学校教育、青少年育成、生涯学習などあらゆる年代での教育にはじまり、健康づくり、ふれあいの機会を増やす地域活動、さらには伝統文化を保存する活動にも積極的に取り組んでいます。
 学校教育では、子どもたちが自ら考える力を育てるとともに、スクールカウンセラーや保健・教育相談員などを配置するなど一人ひとりに目が届くきめ細かな教育をすすめています。また、誰もが学び、活かすことができる場所として市図書館『煥章館』を開館し、各地域にある分館などと連携して、生涯学習の拠点として運用しています。
 市民と協働してまちづくりをすすめるために町内会などの地縁団体、市民活動団体、行政がそれぞれの役割を分担して地域を育てることを目的に、「市民活動応援指針」を策定。さらに、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている三町や下二之町。そして大新町地区などでは、地域の皆さんと協働して伝統的な建造物、町並み、景観の保存をすすめています。また、雪またじや地域の清掃など、日常の生活環境の保全や自主防災組織など地域防災力の向上のためにも、地域でのふれあいを積極的に支援し、「住み続けたい」と思う心を育んでいきたいと考えています。

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作料清水の水汲み場を整備した実年会の人たち People of the Jitsunenkai Group Maintaining Sakuryo Fountain

写真○作料清水の水汲み場を整備した実年会の人たち
People of the Jitsunenkai Group Maintaining Sakuryo Fountain

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