高山市市制施行70周年記念誌 たまゆら|目次

遠い宇宙の記憶

 鳥の目で乗鞍を見てみた。
 裾野から五色ヶ原へかけ、緑色で編み込んだ森の絨毯(じゅうたん)は、広葉樹林帯から針葉樹林帯、潅木(かんぼく)樹林帯へと変化するごとに模様を変える。
 国土の八割を山地が占める日本。その中にあって高山は九割以上が森林で、周囲を穂高岳、槍ヶ岳、乗鞍岳、御岳、白山など名だたる山に囲まれている。
 眼下には人間が足を踏み入れることを数千年も拒み続け、人間の手に慣らされていない森が見え、緑を切り裂くように白い谷川が流れている。それは動脈のように渓谷を伝い、やがて川へと注ぎ、より太い血流となる。
「水はすべての生命の源」
 よくよく考えてみれば、この谷川も、無名の滝も四六億年前、地球がいまの姿になるまでに何万年も降り続いた雨の風景と同じなのだ。滝は遠い宇宙の記憶を内包し、深い森は人類の生命の誕生を暗示している。脈々と流れる太古からの命の懐に抱かれて、この荒々しくも力強い地に飛騨びとは暮しているのだ。

写真右○丹生川町/五色ヶ原上空より白山方面を望む
View of Mt. Haku from above Goshikigahara Forest, Nyukawa-cho


 

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丹生川町/五色ヶ原上空より白山方面を望む View of Mt. Haku from above Goshikigahara Forest, Nyukawa-cho

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